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危機的状況における遊び
:子どものくらしに関わる人のガイド
IPA World代表挨拶
世界は前例のない危機に立ち向かっています。そして、この感染の大流行(以下、パンデミック)への挑戦では、健康や経済のことが大きく強調されています。
コロナウイルスによるパンデミック自体と政府の対応は、世界中の子どもたちに重要な影響を与えます。
国連子どもの権利条約(UNCRC)には、子どもの基本的なニーズが示されています。その中には、子どもの遊ぶ権利が含まれています。
今こそ、子どもが遊ぶ権利をサポートする必要があります。そこで、私たちは「IPA Play in Crisis :危機的状況における遊び 子どものくらしに関わる人のためのガイド」を発行しました。
各ページには、子どものくらしに関わる人が子どもの遊びをサポートできるような情報とアイデアを示しました。その中では、危機的状況における遊びの重要性、子どもの遊びへの応え方、また保護者が心配する喪失、死、孤独といったつらいテーマを表現する子どもたちの遊びについても触れています。
International Play Association(子どもの遊ぶ権利のための国際協会)は、遊ぶことは生きることの基本であり、子ども時代の歓びの重要な部分として認識しています。また、私たちは遊ぶことがすべての子どもの発達において不可欠だと考えています。そして、遊びには、危機的状況の中、子どもが平常心や楽しむ心を取り戻すのを助ける重要な治癒的な役割があります。
IPAのミッションは、子どもの遊ぶ権利を基本的人権として守り、維持し、促進することです。私たちは、この資料が私たちのミッションを果たす助けとなることを願っています。ぜひ、みなさんのネットワークを通じて広めてください。
共に、子どもたちの成長に欠かせない遊びの機会を保障していきましょう。
IPA 代表理事 ロビン・モンロー・ミラー
2020年4月
危機的状況における遊ぶことの重要性
遊ぶことは、子どものからだとこころの健康を保つのに役立ちます。そして、健康で幸せな子ども時代の毎日の一部となります。遊ぶことは、現在のコロナウイルスのパンデミックのような危機的状況の際にも重要になります。遊ぶことは、子どもが自分のこころとうまく付き合い、すべてのことは心配することなく、大丈夫になっていくという感覚を保つことにつながります。
危機的状況の中、子どもにとって遊ぶことは次のことにつながります。
・こころの健康を保つ。
・からだを動かす。
・リラックスをして心配ごとを忘れる。
・世界で起きている新しい経験や変化を理解する。
・困難または恐怖の気持ちとうまく付き合う。
家で遊ぶ
現在の危機的状況において、みなさんが子どもの健康や幸福と発達をサポートするには、家で遊べる方法を見つけることが肝要です。みなさんが一緒に遊んで楽しむ時間を作ることは、子どもとの関係づくりやみなさん自身の精神的な健康にもつながる最善の方法のひとつとなります。
遊ぶことは、この危機がもたらす可能性のあるマイナスの影響からも、子どもを守ることができます。
例えば:
・遊ぶことは、創造性と強く結びつき、想像力や問題解決能力につながっています。
・幼児は、遊びの中で何かをしたり、話したりすることで、自らの発達を促します。子どもたちは、そのようにして「考える」ということも学んでいきます。
・子どもは、遊びの中でさまざまなできごとを演じたり、繰り返したりします。子どもたちは、そのようにして、自分に何が起きているのかを理解しようとします。
・子どもが感情を表すことは、自分の感情と折り合いをつけ、コントロールできていると感じるのに役立ちます。
・遊ぶことで、子どもは他の人に害を与えることなく、または自分自身を傷つけることなく、怒りや不満を安全に表現できるようになります。
・遊ぶことで、子どもは自分の強みやものごとに対処する力を伸ばすことができるようになります。
長い時間家にいることや、友達や家族、ふだんの生活、大切な場所から物理的に離れるということは、たいていの人にとって今までになかった状況です。そのようなとき、遊ぶということは、自然なかたちで、活動的に私たちを助けてくれるプロセスとなります。
危機的状況の間の子どもの遊びをサポートする
子どもの遊びは、本能的なものです。たいていの場合、遊びをサポートするためにみなさんができる最も重要なことは、子どもに毎日遊ぶための十分なスペースと時間を与えること、そして理解の姿勢を持つことです。自分たちが遊んでいるのを大人がうれしそうに見ていることが分かれば、子どもたちは遊ぶことをより楽しむようになります。
このコロナウイルスのパンデミックの間、子どもは長い時間家にいることが予想されます。子どもたちは友達や家族、ふだんの生活、大切な場所から物理的に離されてしまうこともあるでしょう。これは子どもたちにとっても、私たちの多くにとっても、今までになかった状況です。
みなさんは、子どもがふだんとはちがった遊び方をしていることに気づくかもしれません。子どもたちが、小さかった時に楽しんでいた遊び方に戻ることがあるかもしれません。また、病気、喪失、さらには死を連想させる遊びをする子どもたちが出てくるかもしれません。子どもたちのこうした遊び方は、ストレスや退屈さ、混乱といった気持ちの表れとも考えられます。
子どもの遊びに応える
遊ぶことは、子どもたちがストレスを処理し、自分たちなりに状況に対処するためのひとつの方法です。子どもたちは遊ぶことで、自分の考えや対応方法を理解していきます。
子どもが苦痛を感じたり、遊びに行き詰まっているように見えたりしないかぎり、たいていの場合は、それが子どもたちの対処方法だと考えてよいと思います。
一方で、遊び道具や場所、遊べる時間について、子どもがいつも以上に大人に頼ってくることがあるかもしれません。そして、子どもたちは、自分が安心を感じ、見守られていることをいつも以上に求めてくることもあるでしょう。
みなさんが子どもの遊びを別の方向に誘導したり、取り上げたりしてしまうことなく遊びをサポートできるようにするためのヒントを挙げておきます。
・遊びに誘われるまで待ってみましょう
もし子どもが楽しそうに遊んでいたら、そのまま遊ばせておいても大丈夫です。
・遊びが邪魔されることから守りましょう
もし子どもが遊びに夢中になっているのであれば、テレビやゲームのスイッチを付けたり、遊びを止めさせて何をしているのかをわざわざ聞いたり、別のことに誘ったりするのを避けましょう。
・子どもが探求し、間違える機会をつくろう
子どもが馬鹿らしいと思われたり、ダメな子と判断されたりせずに、試行錯誤しながら、自分の考えで動くことができるようにしましょう。
・子どものペースでスキルを磨けるようにしよう
子どもが困難にぶつかっているのを見ると、つい手を出したくなってしまいますが、子どもたちはそうしてものごとを学んでいきます。
・何をして遊ぶかは、子どもが選べるようにしよう
大人が困難を感じたり、気を悪くするようなテーマが見えたりしたとしても、それがその子の遊びなのです。
ここでは、子どもの遊びをサポートするための一般的なヒントを紹介しましたが、実際にはみなさん自身の判断を信じてサポートをしてください。
子どもは、大人と一緒に遊びたがったり、ただそばに居たいと思ったりすることもあります。そうすることで、子どもたちは安心を感じ、見守られていると感じます。また、子どもたちが大人と一緒に長時間を屋内で過ごすことに慣れていなければ、大人から見られないように遊びたいと思うこともあるでしょう。
子どもの遊びについて考えてみよう
いつもよりも長い時間を子どもと一緒に過ごすことは、子どもの遊び方を理解するよい機会になります。それが結果的には、お互いにうまくいく日常生活を送ることにつながります。こうした機会は、大人にとっても遊び心を発揮できるチャンスです。大人にも、遊ぶことから得られるメリットがあるのです。
子どもの遊びは、いつも同じではありません。子どもは一人で遊ぶのを好むこともあれば、誰かと遊びたいと思うこともあります。家にいて、誰かとオンラインで遊びたいと思うこともあるでしょう。また、遊び相手になるのは、ペットや人形、ぬいぐるみかもしれません。
子どもは、アクティブでエネルギッシュな遊びを楽しむこともあれば、別の場面では静かな遊びやクリエイティブな遊びを選ぶこともあります。これらはすべて、子どもの自然な遊び方なのです。
子どもの遊び方に目を向けるチャンスは、子どもと一緒に過ごす時間の中でもステキなひとときとなるでしょう。
具体的に言うと…
・子どものことをより理解できるようになります。
・子どもが楽しめそうなアイデアを手に入れることができます。
・子どもの気持ちを理解する手がかりを手に入れることができます。
・一緒にいる時間がお互いにリラックスできて楽しいと思える生活を送れるようになります。
遊びに参加する前に考えておきたいこと
・「立ち止まる」子どもの遊びに参加する前には、まず立ち止まってみましょう。
・「見る、聞く」そこで何が起きているか、子どもが何をしているかを見て、聞いてみましょう。
・「考える」次に、子どもがどのように遊んでいるかを考えてみます。大人が急に遊びに参加することで、何が起こると思いますか?もし子どもが安心して遊んでいるのであれば、その遊びに入る必要があるでしょうか?
・「決める」そして、自分がどう行動するかを決めます。立ち止まって、見て、聞いて、考えたあとには、子どもが大人に参加してほしいかどうか分かるようになっていると思います。
・「振り返ってみる」大人が遊びに参加したことで遊びがどのように変化したかを考えてみましょう。たとえば、子どもたちの遊びを止めてしまってはいませんでしたか?楽しさが増えましたか?安心を与えることができましたか?
子どもたちはたいてい、自分がどのタイミングで他の子どもと遊びたいのか、または一人で過ごしたいのかを知っているようです。大人は、このタイミングを見極める方法を覚えておいた方がよいかもしれません。そのための方法として「大人はあっちに行ってほしい」と子どもたちに言ってもらえるように頼んでおくこともよいでしょう。
子どもは、「大人に来てほしい」「遊んでほしい」ということを伝えるために色々な方法を取ることがあります。それは、言葉で伝えるだけでなく、こんな表現になることもあります。
・ヘンな顔を見せてくる
・肩をトントンと叩いてきて、逃げる
・抱っこを求めてくる
・近くでうろうろしている
・気を引こうとして、大人がイライラするようなことをする
・おもちゃを持って、見せにくる
遊びに参加するにはいろいろな方法があります。それは、子どもと一緒に遊ぶことだけでなく、次のような場合も参加していることになっているようです。
・段ボール箱やソファーくらいのせまい場所でも、遊べるためのスペースを作ってあげる
・子どもが遊んでいる時の気持ちに合わせて、家じゅうにある遊べそうなものを探せるように手伝う
・歌を歌ったり、音楽を聴いたり、お話を聞かせたりする
・遊べるものを見つけてくる…例えば、隠れ家を作るためのシートや、カフェごっこができるような鍋やフライパンなど
喪失、病気、そして死といったつらいテーマを含む遊び
子どもたちは、楽しみ、くつろぎ、わくわく、交流など、遊びからよいものをたくさん獲得します。また、遊びは、子どもたちが困難や恐怖、混乱に対処する力を発達させる重要な方法でもあります。
ただ、子どもの遊びに喪失、死、病気、孤独などのテーマが含まれていると、それを見たり聞いたりすることに対して、大人は苦痛を感じることがあります。みなさんも、そういったテーマが含まれる遊びに対して、つらい気持ちになったり不謹慎だと感じたりすることがあるかもしれません。
もし、子どもたちがつらいテーマが含まれる遊びをしていたら、そういったテーマから遊びをそらしたり、守りたいと思うことは当然のことでしょう。それでも、子どもたちはこのコロナウイルスのパンデミックの間にも遊ぶことを必要としているし、遊びたいと思うものということは知っておいてほしいと思います。
上記のような遊び(つらいテーマが含まれた遊び)は、次のような点で子どもの役に立ちます。
・困難な状況に向き合う
・子どもが自分の感情とうまく付き合う
・自分はものごとをコントロールできていると感じる
・子どもたちが知りたいと思っていることについて質問をする
・子どもたちが人生で直面する他の困難なことに対処する力を高める
つらいテーマが含まれた家での遊びの例
・子どもがテレビやインターネットで見たり聞いたりしたシーンを行動で表現する
例:病院の病棟や葬儀のようす、苦しんでいる人や助け合っている人々、政治家が発表をしている場面など
・できごとの再現をしながら、その結末を変えていく
例:誰かが病気から回復し始めるような遊びをする
・大きな問題への解決策を見つけるような遊びをする
例:ウイルスに関連する名前のスーパーヒーローが遊びの中に登場する
・ウイルスや科学者、死などを象徴する空想のキャラクターを作り出す
・テディベアや人形、または自分の兄弟(姉妹)に何が起こっているかを説明し、
これまでにはなかったルールには従わないように言って聞かせる
・感情を行動で表現する
例:怒り、恐れ、孤独などを表現する。そして、それを面白おかしくしたり、大げさなものにしたり、刺激的なものにしたりする。
・まるで現実のように、好きな人の死や葬式のようすを演じる
遊ぶことで、子どもは自分の感情を心の中に閉じ込めずに吐き出せるようになります
上記のようなタイプの遊びは、みなさんを不安に感じさせるかもしれませんが、なぜ子どもたちがこんな方法で遊ぶのかを覚えておくとよいでしょう。
こうしたタイプの遊びは、大人にとって次のような機会となります。
・子どもがどのように感じているのか、向き合っているのかをより理解する
・子どもたちがまちがった認識をしていることに気づく
例:ウイルスの広がり方やパンデミックが続く可能性などについて
・子どもにたくさんの安心感を与える
・思いやりの表現や葬式の儀式、お祝いに関係するものなど、みなさんの生い立ちや信仰、伝統行事や文化に関わることについて子どもと共有する
・子どもの年齢にふさわしい情報をより分かりやすく提供する
私たちの気持ちは、子どもたちの遊びへの反応の仕方に影響します。時には、子どもの遊び方がみなさんを不快にさせることがあるかもしれません。けれども、そのような遊び方が、子どもにはとても重要な可能性があると考えてみてください。
家でのうるさい、または破壊的に見える遊びに対応する
子どもは時として、
・つらい感情と向き合う
・大人がどんな反応を示すかを試す
・満足感を得る
・ものごとをコントロールする感覚を得る
ために遊びを使います。
子どもは今までにない混乱と恐怖を伴う、まったく新しい経験とともに生活しています。これは、大人にとっても同じですね。
遊びは、子どもにとって、聞いたことや見たこと、感じたことを自分自身で理解し、受け入れるためのとても大切な手法です。そのため、選択肢が奪われたように感じたり、この状況がどれくらい続くのかを知る術がほぼないというのは、つらいことだと思います。
子どもたちが恐怖や混乱の感情を持ったとき、遊びはどのように見えるのか?
遊ぶことは、子どもたちが変化に適応する方法のひとつです。そのため、子どもたちの遊び方はうるさくしたり、破壊的になったり、静かで穏やかになったりというように変化することがあります。
ここに、そうした遊びの例を紹介します。
・とてもうるさくなる
例:叫ぶ、大声で歌う、たいこを激しく叩く、騒々しくものを打ち付ける
・おもちゃや物で欲求不満を解消する
例:枕にパンチする、そこら中にぬいぐるみを投げる
・子どもが作ったものを自分で壊す
例:絵を引き裂く、積み木などで作ったタワーを壊す
・小さな空間に引きこもる
例:段ボール箱の中、ベッドの下、シーツや枕で作った隠れ家
・あなたや兄弟(姉妹)と戦いごっこやじゃれつき遊びをする
年長の子どもたちや10代の子どもも、このように遊ぶことがあります。私たちが心に留めておきたいのは、年長の子どもたちにとっても、まだ遊ぶための時間と場所が必要だということです。
家でのこうした遊びをどのように見守る?
子どもはこのようにして今までにない状況への対処方法を学ぶということを、知っているだけでも役に立ちます。けれども、子どもを自宅に閉じ込めてしまっている時には、扱いが難しい場合もあります。
・遊びの音によるご近所への影響が心配なときは、近所の人と話してみましょう。
子どもの遊んでいる声に喜びを感じる人もいますが、そうではない人にとっては睡眠や活動の妨げでしかないと感じることもあります。その場合には、お互いの許せる範囲を見つけたり、配慮したりすることが必要になります。
・子どもが引き裂いたり、めちゃくちゃにして遊んでもかまわないものを見つけておきましょう。
例:古いシーツ、段ボール箱、クッションなど。
・何度も叩いたり、押しつぶしたり、つついたりできる子ども用粘土や造形用粘土を用意してみましょう。いらない小麦粉と油があれば、自家製の粘土を作ることができます。
・子どもが十分に年長であれば、うるさくしてもよい時間と静かにした方がよい時間について話し合ってみましょう。
・大きな音を立てられるものを用意してみましょう。
例:ゴミ箱のふた、ドラムスティック、鍋、フライパンなど。
みなさん自身やご近所の人が許容できる範囲の一定時間で、子どもに好きなだけ音を立てさせてあげましょう。そして、子どもたちには、終わった時の片づけの説明もしておきましょう。
・大人も「子どもは遊ぶことが必要」と理解していることを子どもに伝えましょう。
子どもたちには、みなさんが「不必要なダメージを自分自身や他人、家財に与えることなく遊べるように手助けしたい」と思っていることを伝えてください。
家での「はちゃめちゃ遊び」
どの年齢の子どもも、遊ぶときには、はちゃめちゃになることがあり、それが楽しいものです。けれども、みなさんが家で子どもと長らく一緒に過ごしていると、そうした遊びに対処するのはより難しくなるでしょう。
散らかすことは、遊びの本質でもあります。
具体的に言えば、子どもは遊びを通して次のようなことをしています。
・自分の感覚をフルに使い、見え方や感触、においや音を探求する
・創造的で、想像力が豊かになる
・物事の仕組みを学ぶ
例:色を混ぜたら何が起こるのか、水はどのようにしたたるのか、シャボン玉はどのように浮くのか
・ものをつぶしたり、バラバラにしたり、ぐちゃぐちゃにすることで満足感を得る
・水をバシャバシャする、くすくす笑う、くすぐる
コロナウイルスに関連した「はちゃめちゃ遊び」
現在の状況では、子どもはこうした「はちゃめちゃ遊び」を次のように使う可能性があります。
・細菌やウイルスに対する自分の気持ちを確かめようとしたり、どうやって人から人へ感染するのかを探求したりする
もし子どもが上記のような遊びをしたら、こんな風に見守ってみてください。
・子どもが自由に遊べるようにして、何が起きているのかを自分で向き合えるようにする
・子どもたちの遊びを使わせてもらい、ウイルスがどのようなもので、どのように人間に影響するのかについて話すきっかけにする
家で「はちゃめちゃ遊び」をするときのヒント
服を洗濯したり干したりするのも大変ですが、家でとても長い時間を過ごさなければならないときの、家での「はちゃめちゃ遊び」はさらに大変なことかもしれません。ただ、子どもたち自身も、家族にストレスをかけたくないと気を使ってしまうことがあります。
ここで大切なのは、みなさんが家族に合ったバランスを探すことです。ここにいくつかの提案をします。
・濡れたり汚れたりしても大丈夫なことを子どもに伝えておく
・汚れても大丈夫な古い服を何枚か用意しておく
・汚れた服やおもちゃの片づけや整理を子どもと一緒にする
・床やテーブルを古い布や新聞紙でカバーしておく
・汚しても大丈夫な場所がどこなのかを子どもと話し合っておく
・たいてい、お風呂場は「はちゃめちゃ遊び」や水遊びに最高な場所ですよね
家まわりで見つかる遊びの素材
ほとんどの人の家には、遊べそうな素材がたくさんあると思います。
「遊び=ゲームやおもちゃ」と思うかもしれませんが、子どもはいろんなものを使って遊ぶことで、想像力や工夫する力が刺激されます。例えば、段ボール箱や古いシーツなどはさまざまな方法で遊び道具に変えることができます。
さぁ準備をしよう
・子どもが遊ぶ前に、清潔で乾いているかを確認しておきましょう。
・素材の壊れやすさを判断しておきましょう。子どもが破ったり、めちゃくちゃにしたりして壊しても大丈夫なものかどうかを考えておいてください。
・ビニール製の袋やラッピングは避けましょう。窒息を防ぐためです。特に小さな子どもがいる場合は避けましょう。
・小さな物は避けましょう。瓶のふたや貝がらなどは、小さな子どもたちが誤飲する可能性があります。
・公的な衛生に関するアドバイスを知っておき、子どもたちも同じことができるようにしましょう。
・とがったものがないかを確認しましょう。
家で見つけられるものを使った遊びのアイデアとして、こんなものがあります。
<梱包用品とリサイクル品>
ふつうは捨ててしまったり、リサイクルに出したりしてしまうものを使うことができます。
・アルミホイル、アルミの食品トレー、食品ラップ
・ペットボトルや容器
・厚紙…例えば、シリアルの箱、卵の箱、トイレットペーパーの芯、パッキング用ケースなど
<家庭にあるアイテム>
家で毎日使っているものも、とてもよい遊び道具になります。
・シーツ、羽毛布団、枕、古着
・いす、テーブル、段ボール箱
・鍋、フライパン、木のスプーン
・紙、チョーク、風船、絵の具
・糸、輪ゴム、ペグ、クリップ
<アクティビティの例>
・模型、パペット、盾、楽器などを作ってみる
・枕やダンボールが平になるまでつぶしたり、踏んづけたりしてストレスを解消してみる
・カードに絵を描いたら、それを切ってジグソーパズルにしてみる
・お店屋さん、学校、キッチン、銀行、郵便局、美容院、カフェなどのごっこ遊びをしてみる
・水の中で、遊び道具を集めたり、分けたりしてみる
・隠れ家を作って秘密基地にしたり、快適空間を作ったりしてみる
・衣装に着替えてショーを開催してみる 連続ドラマやお芝居ごっこをしてみてもいいかも
・小さな室内ガーデンを作ってみる タネを植えて、どんな風に成長していくか観察してみる
・新しいボードゲームを発明してみる
<自然の素材>
タネや貝がら、植物、小枝、棒、小石や石といった自然の素材は、常に遊びに使われる素材です。すでにみなさんの家の周りでも見つけられているかもしれません。そうした素材を集めて、室内に持ち込んで遊ぶのもいいですね。
・自然のものは、取り過ぎないようにしましょう。
・植物や樹木、生きているものや巣などは、傷つけないようにしてください。
・できたら、遊び終わったものは自然に返しましょう。
外で過ごす時間を最大限に活かそう
屋外に出ることは、私たちのこころとからだの健康によいものとされています。屋外に出ることで、部屋の中で一緒に長い時間を過ごすことによるプレッシャーからも解放されるでしょう。
気を付けること
みなさんの中には、体を動かすために1日の少しの時間しか外出が許されていない人がいるかもしれません。
外出に関する規制は国によって異なり、コロナウイルス流行の進行具合によって変わっていく可能性があります。そのため、みなさんの国の公式な外出規制には必ず従うようにしてください。
・外に出るときには、人との間隔を必ず2メートル(6フィート)空けるようにしてください。
・家に着いたらすぐに手を洗いましょう。
・一緒に住んでいない人と会うことを避けましょう。それは、友達や親戚の場合も同じです。
・人との間隔を2メートル空けることができないような場所では、体を動かすことは避けましょう。
外で過ごす
都会の道や公園、田舎など、屋外での時間をどこで過ごしても、自然はみなさんの周りにあります。
・少し立ち止まって、子どもと一緒にあたりを見渡しながら、見えたものや感じたことを話してみましょう。
・木に抱きついてみたり、岩の上に立ってみたり、舗道のすき間から生えている雑草を見つけたりしてみましょう。
・住んでいる地域の植物や木、鳥の名前を調べてみましょう。外に出た時に、それをどのくらい見つけることができそうですか?
・空を見上げて、天気を予想してみましょう。そして、その日の天気がどうなるかを想像してみてはどうでしょう。明日は?来週は?ノートにお天気日誌をつけて、絵やメモを残しておくのもよいかもしれません。
・写真を撮ったり、絵を描いたり、詩を書いたり、物語を聞かせたり。
・身の回りの環境の中で、食べられる野生のものがあるのかを調べてみましょう。
・よく行く場所を選んでみてはどうでしょう。例えば木立や茂み、小川、運河など。そして、日々どんな変化があるのかを見てみましょう。葉っぱやつぼみが大きくなっているかな?虫はそこで生きているかな?
・もし地域での規制がなければ、一日のちがう時間に外に出てみましょう。早朝、日の出の時間、お昼ごろ、夕方、日が沈むときなど。太陽や月、影や光がどのような変化をしているか気づくかな?
外での簡単な遊び
・あてっこゲーム(1人が身の回りにある物を1つ決めて、他の人はそれが何かを当てる)
・宝探し
・その場でジャンプしてみる、ピョンピョン飛んでみる、後ろ向きに歩いてみる、逆立ちしてみる、側転してみる、水たまりの中に飛んでみる、影を追いかけてみる
・自分でお話を作ってみる、想像ゲームや空想ゲームをしてみる
・歩道にチョークで絵を描く
・バドミントン、バットやボール、リングなどを使った遊び
・子どもが学校や保育園でする遊びもよいですね。子どもたちに「教えて」と頼むことができます
・小さなおもちゃを家から持っていく 例:屋外でも遊べるおもちゃの動物や車など
・バランスゲーム 例:縁石や歩道の白い線の上など
・家に持ち帰って遊べる小石や木の棒、葉っぱなどを集めてみる
スクリーンタイムと遊び・・・よりよいバランスを見つけるには
画面に費やされる時間とそれ以外の遊び時間とのバランスに悩んでいる家族は多いのではないでしょうか。
コロナウイルスのパンデミック中に自宅でテレビやパソコンを使えると、子どもは次のようなことができるようになります。
・友達や社会集団、家族と連絡を取り合う
・自分の経験や気になること、アイデアなどを共有する
・笑ったり、楽しんだりする
・すべての集中力を使って、ゲームに夢中になる
・クリエイティブな活動に参加する
・情報やニュース、アドバイスなどにアクセスする
現在の危機的状況において、ふだんのルールを多少緩めることは理解できます。けれども、一日中画面の前で過ごすことは、子どもに大切な機会や経験を提供するだけでなく、悪影響を与える可能性があります。
例えば、子どもが眠りにつくのが難しくなったり、他のことに興味が向かなくなったりすることがあげられます。
子どもが健康的なバランスを見つけるために
・大人が理解と興味を示そう。
大人は「スクリーン上での遊びすべてがよいわけでも、悪いわけでもない」と理解していることを子どもに伝えましょう。大人も一緒にゲームをしたり、子どもが好きなアプリを教えてもらったりするのもよいかもしれません。
・動き続けよう。
ずっと座っていたり、横になっていたりするのではなく、定期的に休憩の時間を取るように声をかけてください。歩き回ったり、スタージャンプ(大の字ジャンプ)や腕立て伏せをしたりして、心拍数を上げるようにするのもよいでしょう。
・外に出かけよう。
できれば、外で体を動かすように誘ってみましょう。
・窓の外を見てみよう。
水平線や遠くの建物を見て焦点を変えることは、目の健康によいとされています。
・食事の時間は、スクリーンを見ないようにしてみよう。
食事をしながらお話をしたり、食べ物を味わう時間を取りましょう。
・寝る前のスクリーンタイムを避けよう。
寝つきがよくなり、朝に気持ちよく起きられるようになります。
・一緒に計画を立てよう。
1日にどれくらいのスクリーンタイムを取るのがよいのかを子どもと考えてみましょう。そして、子どもに計画を立ててもらい、その計画を守るために大人が手伝えそうなことを聞いてみましょう。
・コロナウイルスに関する更新情報を繰り返しチェックすることを避けよう。
携帯電話の通知をオフまたはミュートに設定して、ニュースをチェックするのは1日数回だけにしておくのもよいと思います。
・覚えておいてください。
年長の子どもは、小さかった時に好きだった遊びやおもちゃで遊ぶことがあります。そうすることで、子どもたちは安心や安全を感じることができます。
乳幼児期の子どもについて
赤ちゃんもスクリーンに興味を持ちます。周囲の人がスクリーンを使用している場合には、特にそうでしょう。けれども、乳幼児期の子どもの発達に必要とされる最重要なものは、スクリーンからは手に入りません。
乳幼児期の子どもが必要としているのは、次のような人との接触です。
・包み込まれる、抱っこしてもらう、くすぐられる、なでてもらう
・周りを見つめる、ちがう形や顔、色々な距離のものに目を向ける
・子どもとアイコンタクトを取ったり、笑いかけたりする
・自分の手や足、口や体でいろんなものを触ってみる
・赤ちゃん言葉や童謡、子守唄などで子どもに語りかける
家の外で遊べないときの遊び
コロナウイルスのパンデミックは、子どもやその家族にとって、いつもとはちがった状況やつらい経験を生み出します。外に行けないこともそのひとつです。
家で人が密集している場合や、ご近所とのプライバシーがあまりない場合には特に難しいですね。
ストレスを感じたり、落ち込んだりするのは、当然のことです。そんなときには、気持ちをケアして、リラックスする方法を見つけることが大切です。
いくつかの提案を紹介します。
・知っておいてもらいたいことがあります。子どもは、みなさんがいつもパーフェクトな親であることを必要とはしていません。子どもたちが必要としているのは、みなさんが愛してくれて、見守ってくれていると感じることです。
・みなさんが休んだり、リラックスしたりしている間に子どもが楽しそうに遊んでいるのであれば、そのまま遊ばせておきましょう。
・時には、子どもがつまらなさそうにしていることがあってもよいのです。いつも、大人が子どもを楽しませなければいけないということはないのです。
・子どもと遊ぶときは、他の心配ごとは忘れて、子どもたちと楽しむことに集中しましょう。
・時には「いっぱい遊んだからちょっと休憩するね」「ちょっと他の事をしなきゃいけないの」と子どもに伝えるのもよいことです。
遊ぶことは、世界とつながることでもあります。家でできるいくつかの遊びをここに提案します。
窓の外を見ることが楽しくなるゲーム
・見えた車やネコ、人などを数えてみよう。
・見えたものでお話を作ってみよう。例えば、ネコは何をしようとしているかな?そのネコの名前は?もしネコになったら、世界はどう見えるかな?
・街灯が夜には点灯して朝には消えているのが見えるかな?朝に鳥たちが歌い始めて、夜に静まる瞬間が聞こえるかな?
・夜になったら、星や月を探したり、その明かりや影、鳥やコウモリ、野生の動物が動いているのを探したりしてみよう。
窓の近くでは、必ず子どもの安全に十分注意してください。
自然の素材を家に持ち込んでみよう
・自然のもので作られた遊べそうなものを家の中で探してみよう。木のスプーン、枝で編んだかご、コットン、シルク、小石や羽根など。
・窓のそばで小さな室内ガーデンを作ってみよう。ハーブを育てて匂いをかいでみたり、味わってみたり、花を植えてみてもよいですね。
・トレイに飾り付けをして、アートなお庭を作ってみよう。ラッピンペーパーやティッシュ、お菓子の包装、ダンボールを使って木を作ったり、植物や鳥を作ったりしてもよいですね。
・図鑑やインターネットを使って、どんな種類の鳥や虫なのかを調べてみよう。
アクティブに過ごせるようにしよう
家で体を使ってアクティブに過ごすのは難しいかもしれません。けれども、エネルギーを使うことでみなさん(と子ども)の気分を高めたり、眠りの質が上がったりするなど、たくさんのメリットがあります。
・音楽をかけて踊ってみよう
ヘンなダンスやスローモーションをする、自分の好きなダンサーのダンスについていく、フリースタイルで踊ってみるなど
・体操
みなさんの部屋をトレーニングジムに変えてしまいましょう。スクワットをしたり、決めた場所の上を走ったり。片足でバランス取りにチャレンジ!学校でやっている体操を子どもに聞いてみましょう。
・じゃれつき遊び
レスリングごっこはエネルギーを消費し、楽しいものです。壊れやすいものを動かしたり、床に布団を敷いたりするとより安全です。
スペースをつくる
時には、子どもは一人で遊んだり、人に見られないように遊んだりするのを好みます。みなさんも、そうした場所を必要とするときがあるのではないでしょうか。
・秘密基地やテントを作るための材料を探しましょう。テーブルの上にシーツをかけるだけというシンプルなものでも大丈夫です。側面に布がぶら下がっているので、子どもはその中で遊ぶことができます。
・大きな段ボール箱は、完璧な子どもの遊び道具です。
・枕やクッションを積み上げて、快適コーナーやふかふかエリアを作ってみよう。
・照明を消して、部屋のムードを変えて暗闇の中で遊んでみよう。外からの光だけで遊んでみてもよいかもね。懐中電灯や小さなランプで影を作ってみよう。
・子どもと同じように、時には大人にも少し静かな自分だけの時間が必要だということを子どもに話してみてください。たとえ、みなさんが別の部屋で過ごせなかったとしても、静かに遊ぶべき時間があるということを子どもたちも学んでいきます。
他のページでも、コロナウイルスのパンデミック中の家での遊びについてのガイダンスやアイデアを掲載していますので、参考にしてください。
・つらいテーマが含まれる遊び(死や喪失、孤独など)
・うるさい、はちゃめちゃな遊びに対応する
・家まわりでの遊びのアイデア